介護職員不足の解決策?見守り介護ロボット導入のメリットと課題

介護ロボット

 

政府は、ロボット技術の活用により高齢者等の自立支援を実現するべく、「ロボット技術の介護利用における重点分野」を平成24年11月に策定し、ロボット介護機器の開発支援を行っています。

ロボット技術の介護分野への活用の背景には、介護職員の不足という問題があります。

現状、介護職員が行っている介助などの負担をロボットに分配することが、介護職員不足の解消につながるからです。

平成30年度の介護報酬改定では、見守り介護ロボット(見守り機器)を効果的に導入している施設に関して、夜勤職員配置加算をとる為の要件の緩和する改定がなされました。

ここでは、見守り介護ロボット(見守り機器)とはどのようなものか?導入するメリットや課題について紹介します。

 

 

平成30年度の介護報酬改定

介護ロボット

 

平成30年度の介護報酬改定では人材の有効活用や作業効率化を目的として、「介護ロボットの活用の促進」が評価の項目として追加されました。

平成30年度の改定で追加された内容としては、介護報酬の加算である「夜勤職員配置加算」について、見守り機器を導入することにより、加算の算定基準が緩和されるというものです。

夜勤職員配置加算とは、夜勤帯の職員配置人数が、最低基準より「+1名分」の人員を多く配置している場合に取得できる加算のことです。(平成30年度改定前)

 

 

夜勤職員配置加算の基準の緩和

【介護ロボット活用の促進について】

介護ロボット活用の促進

 出典:厚生労働省 平成30年度介護報酬改定の主な事項(案)

 

平成30年度の介護報酬改定で、見守り機器の効果的な導入により夜勤職員配置加算の要件が緩和されることを紹介しました。

具体的な内容としては以下の要件を満たす場合に、夜勤職員配置加算の取得用件が「夜間帯の人員+1名分」から「夜間帯の人員+0.9名分」に緩和されます。

 

【夜勤職員配置加算の緩和要件】

 

  • 入所者の動向を検知出来る見守り機器を入所者数の15%以上設置
  • 見守り機器を安全かつ有効に運用する為の委員会を設置

 

 


見守りロボットが介護職員0.1人分に当たるってことだね!

 

見守り介護ロボットとは?

 

介護ロボット

 

見守り介護ロボット(見守り機器)とは、主に居室で利用者が生活している際に、利用者の行動を見守る為に使用します。

国立研究開発法人日本医療研究開発機構の介護ロボットポータルサイトでは、センサーや通信機能を備え、ロボット技術を用いた以下の6つの特徴を持つ機器が見守り介護ロボット(見守り機器) にあたるとしています。

 

【見守りロボット(見守り機器)の6つの特徴】

  • 複数の要介護者を同時に見守ることが可能。
  • 施設内各所にいる複数の介護従事者へ同時に情報共有することが可能。
  • 昼夜問わず使用できる。
  • 要介護者が自発的に助けを求める行動(ボタンを押す、声を出す等)から得る情報だけに依存しない。
  • 要介護者がベッドから離れようとしている状態又は離れたことを検知し、介護従事者へ通報できる。
  • 認知症の方の見守りプラットフォームとして、機能の拡張又は他の機器・ソフトウェアと接続ができる。

出典元:介護ロボットポータルサイト

 

 

見守り介護ロボットの目的

見守り介護ロボット(見守り機器)は、居室にいる利用者の行動を把握するために使用されます。

そのもっとも大きな目的は、居室にいる利用者の危険な行動を察知することです。

睡眠時間である夜間に、転倒の危険があり歩行つき添いの介助が必要な利用者がトイレに行きたくなりベッドから起き上がったとします。

付き添い介助無しで歩行された場合、トイレにいく道中で転倒してしまい、骨折や頭を強く打つ等、重大な事故につながってしまう可能性があります。

利用者に安全に生活して頂くためにはトイレに起き上がる時間を予見し、何度も居室に足を運び様子を見に行く必要がありますが、どれだけ頻繁に様子を見に行ってもトイレに行くために起き上がった瞬間に足を運ぶことは難しいです。

見守り介護ロボットを使用すれば、居室に足を運ぶことなく利用者の起き上がりを察知した後、速やかに居室に向かい歩行付き添いの介助を行うなど、安全性の高い生活を提供することが可能となります。

 


利用者さんの安全も守れるし、介護者の負担も軽減されるね!

 

見守り介護ロボットの機能と運用方法

政府からの開発支援を受け、さまざまな機能をもつ見守り介護ロボット(見守り機器)が登場しています。

機種により違いはありますが、見守りロボットには以下のような機能があります。

それぞれの機能と、どのような場面でその機能が使われるかについて紹介します。

 

【見守り介護ロボットの機能】

 

  1. ベッドからの起き上がりを検知
  2. ベッドの端に座っている(端座位)ことを検知
  3. ベッドからの立ち上がり(立位)を検知
  4. ベッドから長く離れている(離床)ことを検知
  5. 利用者のシルエット確認
  6. 呼吸・睡眠状況

 

 

①ベッドからの起き上がりを検知

ベッドからの起き上がり(背中を上げる)を検知し職員に知らせます。

見守り対象者が素早い、かつ転倒リスクが高く、起き上がったらすぐに介護が必要な場合に使用される機能です。

起き上がり後すぐに職員に知らせると、少し身体を動かしただけでも知らせが入ってしまう為、起き上がり後3秒後に知らせるなど、秒数を設定出来る機種もあります

 

②ベッドの端に座っている(端座位)ことを検知

ベッドの端に座っている(端座位)を検知し職員に知らせます。

見守り対象者が端座位となるまでに怪我をするリスクは低いが、立ち上がりや歩行時の転倒リスクがある場合に使用します。

 

③ベッドからの立ち上がり(立位)を検知

ベッドから立ち上がったこと(立位)を検知し職員に知らせます。

見守り対象者が、数メートルの歩行ならば問題なく行えるが、長い距離の移動は難しい場合に使用されます。

 

④ベッドから長く離れている(離床)事を検知

ベッドから離れ、数分~数十分(設定による)たった場合に職員に知らせます。

見守り対象者の歩行状態が安定していて室内の移動は問題ないが、部屋から出て後に、自力で自分の部屋にもどることが難しい場合などに使用します。

 

⑤利用者のシルエット確認

上述した、「起き上がり」「端座位」「立位」「離床」を検知したと同時に現在の利用者さんのリアルタイムでの動き(シルエット)をタブレットなどの携帯端末に送信し確認が出来ます。

実際に介護の現場で働いていると、センサーの検知はあったものの、利用者の元に到着したときには、安全な姿勢で横になっている事も多くあります。

シルエット確認の機能があれば、検知されたのは危険な動作か?を離れた場所で確認出来る為、介護職員の負担軽減と、何度も様子を見に来られることがなくなる為、利用者の安眠につながります

 

⑥呼吸・睡眠状況確認

利用者の寝返り、心拍、呼吸などを測定し、睡眠状況を把握し、パソコンや携帯端末で確認が出来る機能です。

利用者の睡眠状況を知ることにより、昼夜逆転傾向にある利用者の把握など、生活改善の為の情報を得ることができます。

また、ターミナル(看取り)期の呼吸・心拍を離れた場所から確認することも可能です。

 

 

 


起き上がり~離床の検知は利用者さんの転倒リスクに合わせてどの機能を使うか検討が必要だね…!

 

実際の見守りロボットの一覧は「介護ロボットポータルサイト」をご覧ください。

 

 

見守り介護ロボット導入のメリット

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見守りロボットとはどういうものかを紹介しましたが、実際に見守りロボットを導入するメリットを紹介していきます。

 

 

【見守りロボットを導入するメリット】

 

  1. 利用者が安全に生活できる
  2. 利用者の安眠につながる
  3. 利用者のプライベート空間の保持
  4. 介護者の負担軽減
  5. 介護職員の人材不足問題の解消

 

 

①利用者が安全に生活出来る

施設介護の場合、建物が広く各居室すみずみまで利用者を見守り続けることは非常に困難です。

見守りロボット(見守り機器)の導入により、見守りの範囲を広める事や、見守りをロボットに任せることができるようになります。

特に、夜間に居室で寝ている時にトイレに起きるというシチュエーションでは見守りロボット無しで、起きた上がりを察知し介護に入ることは非常に難しいです。

利用者を転倒や危険な行動から守るために、介護ロボットの導入は有効といえます。

 

②利用者の安眠につながる

転倒のリスクが高い利用者には安全に生活して頂くために、何度も様子を見に行ったり、時には介護職員がトイレを促す声をかけをすることもあります。

私自身、寝ている時に何度も見に来られたり、うとうとしている時にトイレに行きましょうと声をかけられたら安眠することは出来なそうです。

見守りロボットを導入すれば、トイレに行きたいタイミングで安全にトイレにいけるので、利用者の安眠につながります。

 

③プライベート空間の保持

介護施設は共同生活の場ではありますが、各居室は利用者個人のスペースです。

安全に生活して頂くための見守りとはいえ、何度も介護職員に踏み込まれるのは自分自身に置き換えるならば落ち着いて生活できません。

見守りロボットを導入すれば、必要時以外は個人スペースに踏み込む必要がなくなるため、利用者の落ち着いた生活につながります。

 

④介護負担の軽減

介護の仕事の中でも、ベッドからの転落や転倒の危険がある利用者の見守りは身体的・心理的に非常に負担が大きい仕事です。

介護ロボットが、その見守りを代行してくれるのは身体的・心理的負担を大きく軽減します。

実際の現場では、見守りロボットから知らせがあり利用者の元へ急いでも、利用者は動いておらず寝返りなどによるセンサー反応だったということが良くあります。

最近では携帯端末から利用者の現在の動きをシルエットで確認もできる機種も出てきているので、本当に必要な時にだけ利用者の元へ駆けつけることが出来る見守りロボットが普及していけば、さらなる負担軽減につながるでしょう。

 

⑤介護職員の人材不足問題の解消

見守り介護ロボットは、上述したように特に転倒・転落のリスクがある利用者の安全確保に有効です。

見守りロボットを導入していない場合、転倒・転落のリスクのある利用者の見守りは介護職員がする必要があります。

その負担を介護ロボットに負担してもらう分、介護職員がする仕事量は減少するといえます。

見守りロボット単体では微々たるものでも、移乗や移動、排泄、入浴、コミュニケーションとさまざまな分野で介護ロボットの開発は進んでいます。

それらの開発が進んでいくと共に、多くの施設に普及して行けば、人材不足問題に対して目に見える効果があらわれるはずです。

 

 


一つ一つは小さな負担軽減でも、集まれば大きく負担が軽減されるよ!

 

 

見守り介護ロボットの課題

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見守り介護ロボットの機能や導入するメリットを紹介しましたが、導入する上での課題もあります。ここでは、見守り介護ロボットの課題を紹介します。

 

 

【見守り介護ロボットの課題】

 

  1. 価格が高いものが多い
  2. 普及率が低くサンプルが少ない
  3. 端末操作への慣れが必要
  4. 介護は人の手で行うべきとの声もある

 

①価格が高いものが多い

簡易なものであれば安価なものもありますが、「介護ロボットポータルサイト」で紹介されているような見守り効果の高いものは、市場化され間もないこともあってか、価格も数十万~数百万円します。

参考になりますが、2018年1月9日に発売されたパラマウントベッドの見守りセンサー内蔵型の超低床電動ベッド「エスパシアシリーズ」の価格は48万5000円(税別)からとなっています。

介護ロボット活用促進の政府の方針もあり、介護ロボットの購入に補助金を交付している自治体もあります。

神奈川県では1機器につき導入経費の2分の1(補助限度額30万円)の補助金を交付しました。(第1回交付の申請期限は平成30年6月29日まで)

補助金を利用するなどし介護ロボットを普及・活用していく事が、価格の低下につながっていきます

 

②普及率が低くサンプルが少ない

実際に導入している施設がまだ少なく、実際の現場で活用できるのかのサンプルが現在では少い状態です。

前述した、補助金の交付などで普及率を上げて行き有効活用事例を作って行くことが、より多くの施設で介護ロボットを導入するきっかけを作ることにつながります。

 

③端末操作への慣れが必要

現在はスマートフォンなどの普及で、端末操作への苦手意識が減った方が多いかと思いますが、見守りロボットを使用する際は操作方法を覚える必要があります。

端末操作への適応力の高い若い世代から操作方法を広めていくと若い世代の活躍の場になると共に、スムーズに浸透するかと思います。

 

④介護は人の手で行うべきとの声もある

介護は人の手で行うべきであり、ロボットに頼るものではない!との声も根強くのこっています。

私自身も介護の現場で人と人とのやりとりは大切であると感じていますが、必要に応じて負担を分担できるなら介護ロボットを有効活用することも介護の質向上につながると感じています。

夜間にトイレに起きる歩行不安定な利用者の見守りを例にあげれば、いつ起きるか分からない利用者を、他の仕事をこなしながら見守ることは身体的・精神的に非常に負担の大きい仕事です。

身体的・精神的な負担はストレスとなり、そのストレスは介護の質低下、最悪虐待という事態に発展しかねません。

見守り介護ロボットならば、ストレスを感じずに絶え間ない見守りを行うことが出来るため、人の手で行うよりも効果的に行うことが出来るといえます。

 


課題もまだまだあるけど、活用できれば介護の質向上にもつながるね!

 

 

まとめ

 

見守り介護ロボットについて、その機能や導入メリット、導入にあたっての課題を紹介させて頂きました。

介護ロボットというと高価な印象がありますが、政府の方針により、自治体で導入にあたって補助金を交付しているところもあります。

見守り支援型の介護ロボットに限らず、利用者の自立支援、介護者の負担軽減の為のさまざまな介護ロボットの開発が進んでいます。

この記事で紹介した見守り介護ロボットのように、一つ一つの介護ロボットが負担出来る事柄は小さいですが、小さな負担軽減も集まれば大きな負担の軽減になります。

負担軽減の割合が高くなれば、現状の人員配置よりも少ない人数での対応も可能となるため、介護ロボットの導入は将来的には介護職員の不足問題解消の一つの手段になりえるといえるでしょう。

 

 

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