これからの介護はどうなる?高齢化社会の解決策。地域包括ケアを解説!

街路樹

現在、65歳以上の人口は国民の約4人に1人にあたる、3000万人を超えています。

第一次ベビーブームと呼ばれる1947年~1949年に生まれた団塊の世代(約800万人)が75歳以上になる2025年以降は、介護や医療の需要がさらに増えると見込まれ、厚生労働省は介護職員が約38万人不足するという推計を発表しました。

そのような状況をむかえるにあたり、厚生労働省が実現を目指しているのが「地域包括ケアシステム」の構築です。

ここでは、これからの介護業界の動向を知る上で重要となる「地域包括ケアシステム」について紹介していきます。

 

地域包括ケアシステムとは?

 

地域包括ケアシステムの目的

地域包括ケアシステムは、要介護状態となっても高齢者が介護施設に入所することや病院に入院することなく、住みなれた自宅で生活をつづけられることを目的としています。

厚生労働省が行った介護保険制度に関する意見調査でもっとも多かった意見は、自分に介護が必要になった場合「家族に依存せずに生活できるような介護サービスがあれば自宅で介護を受け続けたい」(46%)、両親が介護が必要になった場合「自宅で家族の介護と外部の介護サービスを組み合わせて介護を受けさせたい」(49%)という結果が出ています。

要介護者と家族の両方で、もっとも多かった希望が自宅での生活を継続していくことでした。このことは、地域包括ケアシステムの目的と一致しています。

また、介護予防に力を入れていることも地域包括ケアシステムの特徴です。このことにより、自宅での継続した生活を可能とし、公費負担の大きい施設介護の必要数を減らすことも目的となります。

 


だれだって住みなれた家で元気にくらしていきたいよね!

 

地域包括ケアシステムの概要

 

地域包括ケアシステムのイメージ

地域包括ケアシステム
出典: 厚生労働省 「地域包括ケアシステム」より

 

地域包括ケアシステムは、団塊の世代が75歳以上となる2025年である程度の形が出来ていることを目標としています。

地域包括ケアシステムの構築にあたっては、住みなれた自宅で生活をつづけられることを実現するため、地域包括ケアシステムの5つの構成要素である「住まい」「医療」「介護」「予防」「生活支援」が一体的に提供される地域づくりを推進しています。

安心して自宅で生活できる地域づくりの目安として、「医療」「介護」「予防」「生活支援」のサービス事業所が、自宅から30分以内の場所にあり、すぐに自宅に駆けつけることが出来ることを想定しています。

地域包括ケアシステムは、その地域の特性に応じて地域づくりを行っていく必要がある為、市町村などの自治体主導で行われています。

介護・介護予防・医療サービスの提供などについて、地域住民の相談窓口として機能する「地域包括支援センター」は全国に4300箇所(支所を含めると7000箇所以上)設置され、地域包括ケアを実現する為の機関として機能しています。

 


2025年には、地域包括の考えが一般的なものになっているかもね!

 

地域包括ケアシステムの5つの構成要素

 

地域包括ケアシステムの5つの構成要素である「住まい」「医療」「介護」「予防」「生活支援」について紹介していきます。

 

「住まい」について

生活する上で必要不可欠な「住まい」の整備。本人の希望と経済力に合った住まいが確保されていることが、地域包括ケアの前提になります。

実際の取り組みとしては、自宅のバリアフリー化の補助金や、生活保護の受給範囲内でも入居できる「サービス付き高齢者向け住宅」が国の施策の後押しで増え続けています。

サービス付き高齢者向け住宅は、「安否確認」「生活相談」がサービスとして義務付けられているので、一人暮らしの高齢者も安心して生活が出来ます。

また、都営住宅の跡地を再利用し、デイサービスに併設した、軽費老人ホームを建てる取組みをしている自治体もあります。

 

「医療」「介護」「予防」について

個々が抱える問題に対して、送迎サービスを利用した「通院」や「訪問診療」、「訪問介護」や「デイサービス」、「訪問リハビリ」など、ケアプランに基づいたサービスが、各専門家により一体的に提供される必要があります。

一体的な提供とは、足を骨折した高齢者を例にあげると、まず「医療」での治療と経過観察が必要です。骨折の経過に合わせて、「介護」分野では入浴方法をどのようにするか?例えば「身体を拭くのみとする」「濡れないように保護をして入浴」など医療的な指示が必要です。

「リハビリ」に関しても、骨折の経過により、「安静にする」「軽く動かす」「歩行訓練を始める」などの指示が必要です。

また、「介護」「リハビリ」分野から経過や様子を医療側に伝えることにより、より効果的な治療や観察が行えます。

このように、一体的に「医療」「介護」「予防」の専門家が連携することが、安心した自宅での生活の継続につながります。

 

「生活支援」について

心身の能力低下、経済的な理由、家族関係の変化があっても、安心した生活が継続できるような、生活の支援を行います。

食事を例にあげると、自分で作れるなら「買い物代行」の支援。部分的に自分でつくれるなら「買い物代行」と「調理の見守り・代行」。自分でつくるのが難しいなら「宅配弁当の手配」など、心身の能力にあわせた支援を提供します。

生活困窮者への公的な支援や、ボランティアによる安否確認など、幅広い担い手による地域住民への支援が期待されています。

 

 

 


5つの構成要素どうしが関係しあってる。それぞれの連携が安心した生活には大切だね!

 

「自助・互助・共助・公助」からみた地域包括ケアシステム

 

 

自助・互助・共助・公助、それぞれの役割

 

自助 出典:厚生労働省 「 地域包括ケアシステムの5つの構成要素と「自助・互助・共助・公助」」 より

 

 

「自助」「互助」「共助」「公助」の地域包括ケアシステムでの、それぞれの役割について紹介します。

 

「自助」について

「自助」は自分自身の力で成し遂げるという事です。これから、高齢者の一人暮らしの世帯も増えることが想定され、一層「自助」の果たす役割が大きくなっています。

廃用症候群という言葉があります。安静状態を長期にわたり続けることにより、さまざまな心身の機能低下が起こることを指す言葉です。

自分自身で出来ることをしなければ、今まで出来たことも出来なくなっていきます。住みなれた地域で暮らし続けるには、自分自身の心構えも重要な要素です。

市場サービスの購入も「自助」の一つです。例えば、宅配弁当サービスは、家事負担を軽減するとともに、「安否確認」の意味合いもあります。

宅配サービス業者側も、「安否確認」をサービスの一環とすることにより、新たな顧客の開拓につながります。

 

「互助」について

「互助」は地域住民の互いの助け合いのことです。ボランティアや住民組織の活動も互助の一つです。

地域のボランティアによる「見回り安否確認」はテレビのニュースでもよく話題にあがっています。

住民組織の事例としては、愛知県の名古屋市で「住みなれた町で、家族と共にいいつまでも暮らしたい」と願う人があつまり、「くらし助け合い活動」を展開するNPO法人(特定非営利活動法人)が誕生しました。

くらし助け合い活動は、「移送サービス」「庭の草むしり」「産前・産後のお手伝い」「話相手」など介護保険では出来ないことをお手伝いします。

 

「共助」について

「共助」は、介護保険など、リスクを共有する仲間(被保険者)の負担による支えのことです。

訪問介護などの介護サービスの利用が該当します。

 

「公助」について

「公助」は税金による公の負担による支えのことです。「生活保護」や「一般財源による高齢者福祉事業」が該当します。

一般財源による高齢者福祉事業としては、「見守り事業」「オムツ代助成」「福祉用具給付」「長寿祝金の給付」など、市町村の特色により、さまざまな事業が行われています。

 

 

 


「自助」「互助「共助」「公助」の4つが役割をもって地域を支えているんだね!

 

 

地域包括ケアの要、地域包括支援センター

輪

 

地域包括支援センター」は市町村が設置主体となり、保健師・社会福祉士・主任介護支援専門員等を配置して、3職種のチームアプローチにより、住民の健康保持や生活の安定のために必要な援助を行う施設です。

全国に4300箇所(支所を含めると7000箇所以上)設置され、地域包括ケアを実現する為の機関として機能しています。

生活の不安、健康の不安、同居家族の介護の不安、虐待など、地域住民の相談窓口となり問題解決の為に適切な機関への誘導などを行います。

 

 

地域包括支援センターの主な業務

 

  1. 介護予防ケアマネジメント業務
  2. 総合相談支援業務
  3. 権利擁護業務
  4. 包括的・継続的ケアマネジメント支援業務

 

①介護予防ケアマネジメント業務

要支援1・2と認定された人や、要支援・要介護になる可能性のある人を、介護予防サービスにつなぐ役割を果たします。

社会参加や軽い運動の為の介護予防デイサービスや、食事や掃除などの家事を共に行う介護予防訪問介護などを利用する為に、高齢者に状況に合ったケアプランを作成します。

介護予防訪問介護は、「ご自身で出来ること」を継続していく事を目的とした、訪問サービスです。

 

②総合相談支援業務

住民の各種相談を広く受け付けて、地域包括ケアシステムを活用し、横断的な支援を行います。

保健師(健康・医療・予防)、社会福祉士(介護・生活支援・児童相談)・主任介護支援専門員(介護保険制度全般)の3職種の専門家の配置と連携により、幅広い相談への対応が可能となっています。

地域包括支援センターに相談することで、役所に相談したけど、たらい回しにされた上、なにも解決しなかった、といった事を避けることができます。

 

③権利擁護業務

虐待被害や、お金の管理に不安がある高齢者の権利を守り、安心して生活をできるようにする業務です。

虐待被害の早期発見・対応は地域包括支援センターの役割となります。

また、認知症などにより、お金の管理に不安がある高齢者をサポートする成年後見制度の利用を促進も行います。

 

④包括的・継続的ケアマネジメント支援業務

地域のケアマネジャー等が参加する「地域ケア会議」を通じ、自立支援型ケアマネジメントの支援を行います。

ケアマネージャーへの日常的個別指導・相談。支援困難事例等への指導・助言なども行います。

 

 


何か困ったことがあれば、まず地域包括支援センターに相談してみよう!

 

 

 

地域包括ケアシステムの課題

ネットワーク

 

超高齢化社会を迎えるにあたり、解決策として提示された「地域包括ケアシステム」ですが、現状での課題を紹介していきます。

 

不確定である地域住民同士の「互助」に頼ったシステム作り

 

都市部では「マンションの隣室の人の顔もよく知らない」といった事は珍しくありません。

核家族化が進む中、地域住民同士の助け合いがどこまで機能するかについて疑問視されています。

都市部では強い「互助」を期待することは難しいですが、民間サービス市場(安否確認など)が大きく購入が可能です。地方部では民間サービス市場は小さいですが、「互助」の働きが大きいというのが現在の見方となります。

 

各自治体(市町村)主体の為、地域格差がでる

 

各自治体がその地域の特色に応じて築くのが「地域包括ケアシステム」です。

「自助」や「互助」をどこまで行えるかは、その音頭をとる自治体や実行する地域住民の力にかかってきます。

必然的に、包括ケアが機能している「住みやすい地域」と、あまり機能していない「住みにくい地域」に分かれるでしょう。

「住みなれた自宅で生活をつづける」を目標に掲げる地域包括ケアシステムの構築が原因となり、「住みなれた地域を離れ、住みやすい地域への転居する」ことの引き金になることが心配されています。

 

医療と介護の連携手段やルールが確立されていない

 

地域包括ケアシステムでは、「医療」と「介護」は高齢者にもっとも近い存在として、生活を支えることが求められています。

高齢者のケア計画を立てる上で、双方の連携が高まることにより、より良いケアを提供出来るようになります。

現状では、連携のルールや手段が確立されておらず、そのつど場面にあった方法で連携がなされており、効果的な連携は出来ていません。

 

山形県鶴岡市の事例では、平成23年、地区の医師会で運用していたインターネットの患者情報共有ツール「Net4U」に介護支援専門員への参加を呼びかけるようになりました。

平成24年には、介護者参加型在宅高齢者見守りweb 連絡ノート「Note4U」を導入。

このシステムは、家族やヘルパー等が記入する日々の高齢者の見守りの状況を共有するもので、従来の「Net4U」 とも情報連携していることから、かかりつけ医師や介護支援専門員が 「Net4U」 を利用して、急変時の早期対応や重症化を防ぐことにつながっていくことが期待されています。

このように、インターネットを利用した連携など、地域包括支援センターが主導となり、さらなる連携強化が期待されています。

 


地域包括ケアシステムは、課題もまだ多いんだね…。

 

地域包括システムの中での介護事業所の役割

虹

 

高齢者の住みなれた自宅での生活を支える上で、介護の役割はとても重要です。

「訪問介護」「通所介護」「特別養護老人ホーム」など各介護事業所の役割を紹介していきます。

 

訪問介護の役割

 

訪問介護は、自宅に訪問し、排泄・入浴・食事などの介護サービスの提供や、掃除や炊事などの生活支援サービスの提供を行います。

自宅での継続した生活を目的とするため、自分自身で出来ることはなるべくして頂くような介護予防に重きをおきます。

定期的に訪問をする為、安否確認の意味も持ちます。

 

通所介護(デイサービス)の役割

 

デイサービスやデイケアは、心身機能の低下により自宅にこもりがちな高齢者の社会参加や楽しみの提供をします。歩く・食べる等の機能訓練、同居家族の介護負担の軽減などの役割をもちます。

 

短期入所施設(ショートステイ)の役割

 

要介護状態となった高齢者との同居生活は、家族にとって強いストレスとなる場合が多くあります。

数日間の介護付きお泊りサービスである「ショートステイ」を利用することは、継続した自宅での生活を考える上で大切な要素です。

 

介護老人保健施設の役割

 

疾患により長く病院に入院していた場合、病院から直接自宅に戻ることは、状態によっては難しい場合があります。

介護老人保健施設はリハビリを提供する入居施設です。病院を退院後、介護老人保健施設に入所し、在宅復帰の為のリハビリを受けた後、自宅に戻るといった利用方法があります。

このような、病院と自宅の「中間施設」としての役割をもちます。

 

特別養護老人ホームの役割

 

地域包括ケアシステムの目標は、住みなれた自宅での生活の継続ですが、24時間ケアの必要な一人暮らしの高齢者などは、現実的に自宅で住み続けることが難しくなります。

特別養護老人ホームなどの入所施設は、要介護度の高い高齢者の終の棲家としての役割をもちます。

寝たきりの状態であっても、尊厳を守れるような、看取りケアの充実が大切となってきます。

 


介護施設もそれぞれの役割をもって地域の生活を支えているんだね!

 

 

まとめ

 

これからの介護業界の動向を知る上で重要な、地域包括ケアシステムについて紹介させていただきました。

地域包括ケアシステムの中では、「介護予防」が介護の大切な役割となります。自宅でずっと暮らしたいと思うのは誰しも願う事なので、それを支える仕事はやりがいのあるものになりそうです。

特養のような入所施設も、終の棲家としての機能をもちます。尊厳のある看取りケアを行うことが、介護の専門家としての大切な役割となるでしょう。

 

 

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参考文献                厚生労働省 「地域包括ケアシステム」

 

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